意匠制度について
意匠制度は、工業デザインの創作を保護する制度です。
意匠権は、工業デザインを設定登録日から20年間独占的に実施できる権利です。
プロダクトデザインやパッケージデザイン、画像デザインの保護に意匠制度を利用することができます。
意匠について
意匠とは、工業製品のデザインをいいます。
「デザイン」の中には店舗や陳列棚に並べる商品のレイアウト、生け花の飾り付け、髪型デザインなどがありますが、意匠法で保護される意匠はもっと狭い概念であり、「工業製品の美的外観」です。工業製品の形状のデザイン、工業製品の形状と模様との結合デザイン、工業製品の形状と色彩との結合デザイン、工業製品の形状と模様と色彩との結合デザインが対象になります。
工業性品の部分についても、意匠を特定することができるのであれば意匠として認められ、部分意匠として意匠法によって保護されます。
部分意匠は、工業製品全体としては非類似であっても、その部分が似ていれば意匠権の効力を及ぼすことができます。
意匠の必要性
意匠権の効力は同一の意匠のみならずそれに類似する意匠にまで及ばせることができます。したがって、意匠登録されたデザインに似たデザインを意匠権の侵害として排除することができます。
製品のデザインが市場で認知され、需要の増大が見込まれる後に、それに似たデザインを模倣した製品を売り出し、市場を奪うことも可能です。
製品のデザインに関して意匠権を取得することにより、コピー製品のみならず、デザインの一部を変更した製品を製造販売している企業に対して差し止め請求や損害賠償請求をすることができます。
意匠登録の要件
1工業的に量産できる
意匠がその登録を受けるためには、工業的に量産できることが必要です。
たとえば、純粋美術に分野に属する絵画や版画、影刻は工業上利用することができない意匠であるとして登録を受けることができません。
2今までにない新しい意匠
独自に創作した意匠であっても、それが出願時に既に市場に知られている意匠と同一または類似する場合、登録を受けることはできません。
既に一般に知られた意匠は、新たな希要を喚起せず、それに意匠権を付与するとかえって産業の発展を阻害するからです。
3まだ出願されていない
出願しようとする意匠が、その出願前に既に出願された意匠と同一または類似する場合、登録を受けることはできません。
意匠権は排他独占権であり、他人の実施を排除できる強い権利なので、存続期間の実質的な延長を防ぐことが必要であるとともに、重複登録を防がなければならないからです。
先に出願された意匠が登録されて意匠公報に掲載された場合、その意匠の一部と同一または類似する意匠は登録を受けることができません。
このような意匠は、意匠全体として先願の意匠と非類似となりますが、新しい創作とは認められず、保護価値がないからです。
4容易に創作できない
新しく創作した意匠であっても、出願時を基準として日本または外国で知られた意匠から容易に創作できたものは登録を受けることができません。
意匠権は他人の実施を排除できる強い権利なので、創作性の程度の低い意匠にまで権利を付与すると、産業の発展を阻害するからです。
そればかりか、容易に考えられる意匠を市場において販売できないことになり、社会全体の利益になりません。
5公益に反しない
ある意匠に権利を付与することがかえって公益を害する場合、その意匠は登録を受けることができません。以下の意匠が該当します。
公の秩序、善良な風俗を書するおそれのある意匠
たとえば、元首の像、国旗、皇室や王室の紋章などを表したもの、人の道徳観を不当に刺激し、着恥心や嫌悪感を起こさせるものです。
他人の業務にかかる物品と混同を生じさせるおそれがある意匠
たとえば、他人の著名な商標やサービスマークを表したものです。
物品の機能を確保するために不可欠な形状のみからなる意匠
たとえば、製品の機能を確保するために必然的に備わる形状のみからなるもの、JIS規格やISO規格などの標準規格によって備わる形状のみからなるものです。